2026.07.28

近年、「口がいつも開いている(お口ぽかん)」「あまり噛まずに飲み込んでしまう」「食べこぼしが多い」「発音が気になる」など、お口の機能に関する相談が増えています。
こうした「食べる」「話す」「呼吸する」などのお口の機能が十分に発達していない状態は、「口腔機能発達不全症」として近年注目されており、早期に気づき、適切な支援につなげることの大切さが示されています。
もちろん、子どもの発達には個人差があります。「少し食べるのが苦手だから」「まだ小さいから」と、すぐに心配する必要はありません。
しかし、お口の機能は成長とともに自然に身につくものではなく、毎日の食事や遊び、会話など、さまざまな経験を積み重ねながら育っていきます。だからこそ、ご家庭でできる小さな関わりが、お子さんの「食べる力」を育てる第一歩になります。
日々の食事を楽しみ、たくさん身体を動かして遊び、親子で笑い、会話をすること。その一つひとつが、お口の発達を支える大切な経験になります。
今回は、ご家庭で今日から楽しく取り組める「お口育て」の方法をご紹介します。
お口は「身体の一部」
「お口のトレーニング」と聞くと、舌や唇だけを動かす練習を思い浮かべる方もいるかもしれません。しかし、お口は身体の一部です。
子どもの発達は、寝返りをする→座る→ハイハイをする→歩く→走る といった大きな身体の動き(粗大運動)から始まり、その後、指先を使ったり、積み木を積む、お箸を持ったりする細かな動き(微細運動)へと発達していきます。
実は、お口の動きも「微細運動」の一つです。唇を閉じる、舌を思い通りに動かす、左右の歯でバランスよく噛む、飲み込む、どれも高度な協調運動です。
だからこそ、お口だけを鍛えるのではなく、たくさん身体を動かし、姿勢や呼吸の土台を育てることも、お口の機能を伸ばすためにはとても大切です。
たくさん遊ぶことも、お口を育てる
外遊びや身体を使った遊びは、体幹やバランス能力を育てます。
例えば、走る、ジャンプする、鬼ごっこをする、ボール遊びをする、ジャングルジムや遊具で遊ぶなど、こうした遊びを通して身体の土台が育つことで、座る姿勢も安定しやすくなります。
姿勢が安定すると、お口や舌も動かしやすくなり、食べる時や話す時の動きにもつながっていきます。毎日身体を動かして遊ぶ時間をつくることは、お子さんの成長全体を支える大切な習慣です。
≪今日からできる!おうちでお口トレーニング≫
① よく噛んで味わう習慣をつくる
一番のお口トレーニングは、毎日の食事です。噛みごたえのある食材を、発達に合わせて少しずつ取り入れてみましょう。大切なのは、「硬いものを食べること」ではなく、「噛む経験」を積み重ねることです。
食べながら、「どんな音がする?」「何回噛めたかな?」「甘くなってきたね。」などと声を掛けることで、子どもは噛むことや味わうことに自然と意識を向けるようになります。
「噛みなさい」と言われるより、「噛むとおいしい!」という体験の方が、子どもは自然と噛むようになります。
② シャボン玉遊び
シャボン玉は、息をゆっくり長く吐く練習になります。唇を閉じる力や呼吸のコントロールにもつながるため、小さなお子さんにもおすすめです。
③ 吹き戻し・風船遊び

昔ながらの吹き戻しや風船遊びも、お口の周りの筋肉をたくさん使います。遊びながら、自然と呼吸や口唇の機能を育てることができます。
※風船遊びは誤飲や窒息の危険があるため、必ず保護者の見守りのもとで行いましょう。
④ 変顔大会
子どもは変顔が大好きです。
・ほっぺをふくらませる
・口をすぼめる
・「ベー」と舌を出す
・舌を左右や上下に動かす
こうした遊びは、唇や舌の動きを豊かにし、発音や食べる機能にもつながります。親子で鏡を見ながら楽しむと、笑顔も増えて一石二鳥です。
⑤「お口探検」ゲーム
舌先で、
・上の前歯の裏を触る
・上あごを前から後ろへなぞる
・左右のほっぺを内側から押してみる
・舌先で鼻を目指してみよう
・あごを目指してみよう
など、お口の中を探検するように遊んでみましょう。舌を思い通りに動かす経験は、食べることや話すことにも役立ちます。
⑥ 唇をぐるっと一周!
唇をしっかり閉じる力は、食べこぼしを防ぎ、鼻呼吸を促すためにも大切です。舌で唇をなめる遊びも、おすすめのお口遊びです。
例えば、
・上唇をゆっくりなめる
・下唇をなめる
・唇をぐるっと一周する
・右回り、左回りにも挑戦!
「アイスクリームがついちゃったよ!」「おひげがついちゃった!」などと声をかけると、小さなお子さんも楽しみながら取り組めます。
⑦ 「パ・タ・カ・ラ」でお口チャレンジ
「パ・タ・カ・ラ」は、お口のさまざまな筋肉を使う代表的な口腔体操です。
・パ:唇をしっかり閉じる
・タ:舌先を上あごにつける
・カ:舌の奥を持ち上げる
・ラ:舌先を滑らかに動かす
子どもには、「パ・パ・パ・パ!」 「タ・タ・タ・タ!」とゲームや早口ことば遊びのように取り入れると楽しく続けられます。
⑧ 「あ・い・う・べ」で大きなお口!
「あ・い・う・べ体操」も、お口全体を大きく動かす遊びとしておすすめです。
・あ:大きく口を開ける
・い:横にしっかり広げる
・う:口をすぼめる
・べ:舌をしっかり前に出す
ポイントは、「上手にやること」ではなく、「思いきり動かすこと」。親子で鏡を見ながら変顔大会をすると、笑顔も増えて自然とお口の運動になります。
⑨ 会話や歌も立派なトレーニング
お口は食べるだけではなく、「話す」ためにも使います。
家族との会話や絵本の読み聞かせ、一緒に歌を歌うことは、発音や呼吸、お口の動きを自然に育ててくれます。「今日、何が楽しかった?」そんな何気ない会話も、お口の発達にはとても大切な時間です。
【年齢別おすすめのお口遊び】



「頑張るトレーニング」より「楽しい経験」
子どもの発達に最も大切なのは、「できるようになるまで頑張ること」ではありません。「楽しいから、またやりたい。」その気持ちが、お口の機能を育てます。
毎日の食事、家族とたくさん話してたくさん笑う、体を使って思いきり遊ぶ。
そんな毎日の積み重ねが、「食べる力」「話す力」「呼吸する力」を育て、将来の健康へとつながっていきます。お口のトレーニングは「たくさんやればよい」というものではありません。お子さんが嫌がることを無理に続けたり、痛みを伴う動きをさせたりする必要はありません。まずは、「楽しい!」という気持ちを大切にしながら、お口をたくさん動かす経験を増やしていきましょう。
大切なのは、「今、どんなことができるようになってきたかな?」という視点で、お子さんの成長を見守ることです。
もし、
・口がいつも開いている
・あまり噛まずに飲み込む
・食べこぼしが多い
・むせが多い
・発音が気になる
など、気になる様子が続く場合は、小児歯科や言語聴覚士(ST)など専門家に相談することも大切です。
お口は、食べる・話す・笑う・呼吸するという、生きるために欠かせない機能を担っています。だからこそ、お子さんと一緒に楽しみながら、お口を育てる時間を大切にしていきましょう。
酒田米菓では、噛む様子を観察するための咀嚼チェックせんべいや、日常の中で楽しく噛む経験を増やせる「RiceCrispy」や、炭水化物とたんぱく質がとれる「ミライオニギリプロ」などを通して、子どもたちの「食べる力」を応援しています。
【関連コラム】
◆噛む力は、一生の財産 ― 子どものお口が育つ食卓とは ―
◆そのひと口が、未来をつくる
― 離乳食とお口の発達の関係 ―
◆口腔機能発達不全症とは
【参考資料】
・厚生労働省「授乳・離乳の支援ガイド(2019年改定版)」
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/6790a829-15c7-49d3-9156-9e40e8d9c20c/b0946e59/20230401_policies_boshihoken_junyuu_01.pdf
・日本歯科医学会連合「口腔機能発達不全症に関する基本的な考え方」
https://www.jads.jp/assets/pdf/basic/r06/document-240402-2.pdf
・日本歯科医学会連合「小児の口腔機能発達評価マニュアル」
https://www.jads.jp/assets/pdf/activity/past/hyoukamanyuaru.pdf
・文部科学省「子どもの体力向上」
https://www.mext.go.jp/a_menu/05_c.htm
※全て2026年7月25日利用