2026.06.25

「よく噛んで食べましょう」
子どもの頃から聞いてきた言葉ですが、なぜ噛むことが大切なのか、改めて考えたことはあるでしょうか。 実は、噛むことには単に食べ物を小さくするだけではなく別の意味もあるのです。
■ 「噛む」とおいしくなる!
子どもたちに、「いっぱい噛むとどうなると思う?」と聞くと、「小さくなる!」「飲み込みやすくなる!」という答えが返ってきます。もちろん、これも正解です。でも実は、「噛むと、おいしくなる」という大切な変化も起きています。
例えば、お米やせんべいをよく噛んでいると、「甘くなった!」「お米の味がする!」と感じることがあります。
これは、噛むことで唾液がたくさん分泌され、お米のデンプンが分解されるためです。つまり、『噛むことは、味わうこと』なのです。
本来、食事は五感を使う体験です。
・料理の色や形を見る
・香りを感じる
・噛んだ時の音を聞く
・食感を楽しむ
・味の変化を感じる

ところが近年は、やわらかい食品が増え、早食いや丸のみも少なくありません。すると、「食べる」が「味わう」ではなく、「流し込む」になってしまうことがあります。 けれど、しっかり噛むことで、食べ物のおいしさに気づくことができます。そして、「おいしい」という感情は、「また食べたい」という気持ちにつながります。美味しいものを家族やお友達と一緒に食べたいという気持ちにもつながるかもしれません。
子どもたちには、「噛みなさい!」という指導も大切かもしれませんが、「噛んだらおいしくなった!」という体験をたくさんしてもらうこともとても大切です。
例えば、『咀嚼チェックせんべい』を使って、
・どんな音がするかな?
・何回噛めたかな?
・味は変わったかな?
と問いかけるだけでも、子どもたちは自然と食べ方に意識を向けるようになります。

その体験は、噛む力を育てるだけでなく、食べることへの興味や楽しさを育てていきます。
そして、その積み重ねは将来の食習慣へとつながります。
■ 幼児期以降も、お口は成長を続けている
お口の発達は、離乳食が終わったら完成するわけではありません。
幼児期から学童期にかけてさらに食べる機能が育っていきます。
また、この時期に身についた食べ方や習慣は、大人になってからも大きく影響します。
例えば、
・あまり噛まずに飲み込む
・やわらかいものばかり好む
・口を開けたまま食べる
・口呼吸が続く
といった状態が習慣化すると、お口の機能が十分に育たないことがあります。
反対に、
・様々な食感を経験する
・よく噛んで味わう
・正しい姿勢で食べる
といった経験は、お口の機能を育てるだけでなく、将来のお口の健康を守ることにもつながります。
≪ こんな様子はありませんか?≫
幼児期以降のお子さんの食事の様子を、ぜひ観察してみてください。
□ 口がいつも開いている
□ 食べ物をあまり噛まずに飲み込む
□ 食べこぼしが多い
□ 片側ばかりで噛んでいる
□ 食事中にクチャクチャ音がする
□ 硬いものを極端に嫌がる
□ 水やお茶で流し込むことが多い
□ 食事にとても時間がかかる
これらは成長の過程で見られることもありますが、長く続く場合は、お口の使い方や発達に課題が隠れていることもあります。気になる場合には専門家に相談することをお勧めします。
■ お口の健康は、一生続くテーマ
お口の機能は、「子どもの頃だけ大切」というものではありません。
大人になると、食事を楽しむ、人と会話をする、仕事やスポーツで集中するといったことにも関わります。
さらに高齢になると、しっかり噛める、安全に飲み込めることが、健康寿命や生活の質にも大きく影響します。近年注目されている「オーラルフレイル(お口のささいな衰え)」も、突然始まるわけではありません。子どもの頃から積み重ねてきた食べ方やお口の使い方が、その後の人生にもつながっているのです。
だからこそ、「噛むことを大切にする習慣」は、子どもの今だけでなく、未来への贈り物とも言えるかもしれません。
噛むことは、口に入れた食べものを小さくするためだけではありません。
味わうため。
感じるため。
楽しむため。
そして、お口の機能を育てるためでもあります。
その経験は、食への興味、健康的な食習慣、そして将来の「食べる力」へとつながっていきます。
毎日の食卓にある小さな「カミカミ」。
その積み重ねが、子どもたちの未来の健康を支え、人生の最後までおいしく食べる力を育てているのです。
【関連コラム】
◆そのひと口が、未来をつくる
― 離乳食とお口の発達の関係 ―
◆人生を楽しむため土台作り
~赤ちゃんの口の発達と心・体の成長について~
◆口腔機能発達不全症とは
◆子ども達の噛む力はどのくらい?~咀嚼チェックせんべいの活用方法~
【参考】
こども家庭庁
授乳・離乳の支援ガイド
https://www.cfa.go.jp/policies/boshihoken/junyuu
厚生労働省
口腔機能への健康への影響
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/teeth/h-08-001
日本歯科医学会連合
「口腔機能発達不全症に関する基本的な考え方」
https://www.jads.jp/assets/pdf/basic/r06/document-240402-2.pdf?utm_source=chatgpt.com
※すべて2026年5月25日利用