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噛む健康・カラダづくり

日々の積み重ねが重要⁈~味覚の育てかた~

2024.4.29

味覚とは

 味覚とは、味の感覚。
 味は唾液に溶けた食べ物に含まれる味物質が刺激となって起こる化学的感覚で、舌の表面や軟口蓋、咽頭などにある味蕾(みらい)という感覚器官で感じられます。わかりやすく見やすいのは舌で、舌の表面にあるブツブツとしたものが味蕾です。この味蕾でキャッチした味の情報は、味覚神経を通って、脳に伝わり味覚として感じられます。

味蕾は、お母さんのお腹にいるとき(おおよそ妊娠7週目)からできはじめ、14週目ころには大人とほぼ同じ構造になります。味蕾の数は、生まれたばかりの赤ちゃんが約1万個、その後徐々に減少し大人になると約7千個になります。味蕾の数が多いほど味を強く感じるため、子どもの方が大人よりも味覚に敏感であると言えます。

   

  

味蕾・味覚の役割ってなに?

  

 味蕾では「甘味」「塩味」「うま味」「酸味」「苦味」の5つの基本の味を感じ、美味しさなどを決める要素となります。このほかに、5つの味はそれぞれ体にとって重要なことを伝える役割を担っています。

  

甘味・・・エネルギー源になる糖分があることを知らせる

塩味・・・体の調子を整えるミネラルの存在を知らせる

うま味・・・筋肉や内臓、ホルモンのもとになるたんぱく質の存在を知らせる

酸味・・・腐ったものや未熟なもののだと知らせる

苦味・・・毒が含まれていることを知らせる

  

「甘味」、「塩味」、「うま味」の3つの味は、体にとって必要な要素であることを認識させるため、子どもが好む味。「酸味」と「苦味」は人間の本能が「有害」と判断しているため、子どもが嫌がる味です。

  

また、最近の研究により6つ目の基本味(第6の味覚)として、「脂肪味」があるということが報告されています。脂質はエネルギー源であるほか、細胞膜やホルモンをつくる材料にもなります。脳の約60%は脂質でできているなど、重要な栄養素なので「脂肪味」があるというのも納得できます。

生きるために子どもたちが本能的に甘いものを好んだり、脂っこいものを欲するのでしょう。しかしながら、現代は飽食の時代。好きなものを好きなように食べていては健康上多くの問題を引き起こしてしまうので、コントロールが必要です。

  

  

味覚の発達

  

 3歳ごろが、味覚の発達のピークとも言われています。

 赤ちゃんは、離乳食が始まると様々な味に出会います。そして、日々の食の体験によって「甘味」、「塩味」、「うま味」以外の「酸味」や「苦味」も少しずつ受け入れられるようになり、食べ物の嗜好がつくられていきます。

小さい頃の食事が味覚形成や食習慣を身につけるために重要だと言われています。ですが、何歳からでも食習慣を変えていくことができます。「何もしない」ではなく、気が付いた時に始めることがその後の味覚・嗜好、食習慣や体づくりに良い影響をもたらします。

  

  

なぜ好き嫌いが起こるのか

  

理由①『遺伝的要素』

上述したように、甘味・塩味・うま味は、生きるために必要な栄養素であるというサイン。自然にその食べ物を好むようになります。しかし、苦味や酸味は、毒や腐敗しているというサイン。子どもが野菜や酢を使った料理などを嫌がるのは、遺伝的に組み込まれた行動なのです。

  

理由②食経験による『環境的要素』

離乳食が始まった赤ちゃんは、生まれて初めて目にする食べ物に対して恐怖感を持ち、警戒します。これを「新奇性恐怖(ネオフォビア)」といいます。この不安な状態で食べたことのない食べ物をはじめて食べたあと、たまたま体調を崩したなどの悪いイメージをもつと、味覚嫌悪学習(食べ物の味に対して嫌悪を獲得する学習)がされます。この学習によって、「この食べ物は体にとって良くない」、「もうその食べ物を食べたくない」と記憶してしまいます。逆に食べ物を食べたときに元気が出たなどのよいイメージは、味覚嗜好学習をしてその食べ物がより好きになるといわれています。

  

  

子どもの好き嫌いをなくす方法

 

 好き嫌いが多く食べるものに偏りがあると、バランスよく栄養素を補うことができず体調不良を招いてしまう可能性も。できるだけ幅広く様々な食材を食べられるよう好き嫌いを減らす工夫をしましょう。

  

1.さまざまな素材の味を経験させましょう

小さなころからいろいろな食材に触れている(食べている)と好き嫌いが少ない傾向にあります。決まったものばかりでなく旬を取り入れながら様々な食材を取り入れ、メニューを組み立てましょう。

  

2.繰り返し食べ、苦手食材に慣れさせましょう

嫌いな食べ物は食べてくれないからと言って、食卓に出さないのはよくありません。

無理強いはせず、周りの人が美味しそうに食べている姿を見せるのもよいでしょう。気が向いたときに少しでも口にできれば○。様々な食感・味に触れる経験を増やしましょう。

  

3.薄味に慣れさせましょう

濃い味のものを日常的に食べていると、強い刺激に慣れてしまい、繊細な味が感じられなくなってしまいます。薄味でも、よく噛むと野菜や穀物の甘みを感じたり、肉や魚・きのこなどの旨味を感じたりすることができます。濃い味付けから薄味に変えると最初はもの足りなく感じるかもしれませんが、だんだんと味覚の感じ方に変化が出てくるはずです。薄味の食事を継続して、味覚を磨きましょう。

  

4.「食事=楽しい」というイメージをつける

私たち人間が「美味しい」と感じるのは、味のほかに、見た目や香りなども影響します。お気に入りの器を使用する、食材の盛り付け方を工夫するなど、「楽しい」「美味しい」と感じられるような環境を整えることも大切です。

また、お子さんが食事をする時には、「美味しいね」「幸せな気持ちだね」「○○な味がするね」など温かい雰囲気の会話を交わしながら、家族と一緒に食事をする機会を増やしてみるのもよいでしょう。

  

一緒に食べることで食事に興味をもち、味わってみて、少しずつでもいろいろなものを食べられるようになると「味覚」が育っていきます。

  

  

 その他にも、「ながら食べ」ではなく集中し食事ができるよう環境を整えることも大切です。食事に集中し、食べ物の味を感じとれるようにしましょう。そして、会話で味覚を考えるきっかけづくりをすることもお勧めです。「どんな味がする?」「噛むとどんな音がする」などと味に関する質問をすると、食べ物の味や音、食感に目を向けるきっかけになり、食材や味に対しる感覚が磨かれていきます。

また、嫌いな食材に対して親近感を抱かせる活動をすることも、食べられるようになるきっかけづくりのひとつ。一緒に料理をする、苗や種から育てるといった経験も良いですね。

  

小さなころに身についた食習慣は、大人になっても継続します。好き嫌いなく食べられる味覚を育てられるよう、調理や環境の工夫をしましょう。他にも、噛む習慣、食べる姿勢、また、3食食べることや朝ごはんを食べるといった食事の習慣を身につけることも意識しましょう。

  

  

  

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【参考】

●「味覚情報受容のメカニズム」,宮本武典,比較生理生化学,Vol.21,No.1,2004
https://www.jstage.jst.go.jp/article/hikakuseiriseika1990/21/1/21_1_2/_pdf/-char/ja
(2024年4月19日利用)

●「味覚の形成とその発達」鳥居邦夫,日本海水学会誌,48,3,1994
https://www.jstage.jst.go.jp/article/swsj1965/48/3/48_197/_pdf
(2024年4月19日利用)

●「母子の食物新奇性恐怖と食生活コミュニケーションが野菜摂取におよぼす影響」,淀川尚子、徳永淳也、丸谷美紀、波多野浩道,民族衛生,82,5,183-202,2016
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jshhe/82/5/82_183/_pdf/-char/ja
(2024年4月19日利用)

●「子ども期の食事がその後の味覚感受性や性格特性に及ぼす影響」,岡本洋子、田口田鶴子, 日本家政学会誌,48.7,621-631,1997
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jhej1987/48/7/48_7_621/_pdf
(2024年4月19日利用)

●九州大学HP 研究成果「脂肪酸が第6番目の基本味である証拠となる神経を新発見 -今後の摂食行動・消化吸収との関連解明や食品開発へ影響大」
https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/researches/view/316
(2024年4月19日利用)

●東京大学 農学生命科学研究科プレスリリース
「離乳期における様々な食経験が、味覚に関連する脳領域の活性化をもたらし、味覚感受性に大きな影響を及ぼす可能性」,8,30,2012
https://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/2012/20120830-1.html
(2024年4月19日利用)