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Column

そのひと口が、未来をつくる
― 離乳食とお口の発達の関係 ―

2026.05.28

 

「やっと食べてくれた!」

離乳食が始まると、そんなことばと共にほっとした経験のある保護者の方も多いのではないでしょうか。

スプーンを嫌がったり、口を開けてくれなかったり。昨日は食べたのに今日は食べない。離乳食の時期は、毎日が試行錯誤の連続です。

そんな時、私たちはつい、「どれくらい食べたか」「栄養は足りているか」といったことに目を向けがちです。もちろん、それはとても大切なことです。実は、離乳食にはもうひとつ、大切な役割があります。

それは、「食べる力を育てること」です。

 

赤ちゃんは、生まれた時から上手に噛めるわけではありません。母乳やミルクを飲み込むことから始まり、舌を動かし、唇を使い、少しずつ噛むことを覚えていきます。離乳食は、練習の場でもあります。

 

私たちは普段、食べることを当たり前のように行っています。

しかし、

・唇で取り込む
・舌で運ぶ
・噛む
・飲み込む

という一連の動きは、とても高度な協調運動(体の複数の部位や機能を連動させ、脳の指令によってスムーズかつ正確に動かす一連の身体動作)です。

そして、この力は将来の健康だけでなく、

・姿勢
・呼吸
・発音・ことば
・集中力
・運動

など、子どもの成長にも関わっていることが分かってきています。

噛むことは唾液を分泌し消化を助けるだけでなく、脳への刺激にもつながるといわれています。また、口の機能は体幹とも深く関係しています。口がしっかり使えることで姿勢が安定し、反対に口呼吸やお口ぽかんが続くことで、姿勢や集中力、睡眠の質に影響することもあります。
 
つまり、口の発達は「食べ方」だけではなく、子どもの『生きる力』の土台でもあるのです。

 

 

■ 口は成長とともに発達する

 

赤ちゃんの口は、少しずつ機能を獲得していきます。最初は「飲み込む」ことが中心ですが、舌でつぶす、歯ぐきでつぶす、噛むへと段階的に発達していきます。そのため、発達に合わせて食事の形状を変えていくことが大切です。

 

お口の発達と食事形態の目安】

 

【全時期を通して大切なこと】

① 姿勢

足が床につく、背中が安定する、机との距離(胸と机の間が握りこぶし1個程度)にする。

体幹が安定する→頭が安定する→あごが安定する→舌や唇が動きやすくなる ため、姿勢を整えることはとても大切です。

 

② 急がせない

大人が思うより、子どもは「考えて・感じて・練習して」食べています。食べることに興味をもち楽しく食べられるような経験ができるよう、時間が取れる際には一緒に感じて楽しみましょう。

 

③ よく見てあげる

食べた量だけでなく、

・どう取り込んだか
・どう噛んだか
・どう飲み込んだか

を見ることが重要です。

 

やわらかすぎるものばかりでは噛む経験が不足し、逆に難しすぎるものは食べることへの苦手意識につながることがあります。大切なのは、「少し頑張ればできる」経験を積み重ねることです。よく噛むことは脳への刺激にもなり、味わう力を育てることにもつながります。

口に入れる前に食べるものを見せたりして、何を食べているのか、味や色、食感などについてことばかけをしながら食事をすると、ことばの発達や気持ちを誰かと共有・共感することの喜び、食事が楽しいといった経験にもつながります。

 

 

■ 見逃したくない「お口からのサイン」

    

日々の食事の中で、

 
・口がぽかんと開いている
・ほとんど噛まずに飲み込む
・食べこぼしが多い
・舌が前に出る
・片側ばかりで噛む

 
といった様子はありませんか?
 

 
こうした様子は単なる癖ではなく、お口の発達や使い方のサインであることがあります。
背景には、

 
・噛む経験不足
・口呼吸
・姿勢の不安定さ
・舌や唇の機能の未発達

 
などが関係している場合があります。

 

 

■ こんな時は専門家への相談も

   

発達には個人差があります。一時的なものであれば心配のないことも少なくありませんが、下記のようなことがないか意識してお子さんを観察してみてください。

 

◎離乳食初期~中期

・スプーンを極端に嫌がる
・口を閉じて取り込めない
・食べ物を押し出してしまう
・むせが多い

 

◎離乳食後期~完了期

・ほとんど噛まない
・固形物を極端に嫌がる
・前歯でかじれない
・舌がいつも前に出る

 

◎幼児期

・口がいつも開いている
・食べこぼしが多い
・片側ばかりで噛む
・食事に極端に時間がかかる
・発音が気になる

 

上記のようなことが続く場合は、小児歯科、耳鼻科、言語聴覚士(ST)などの専門家へ相談することをお勧めします。

 

大切なのは、

「できる・できない」ではなく、「今どんな発達段階なのか」を知ること。

それが、お子さんの未来の「食べる力」を育てる第一歩になります。

そのひと口、そのひと噛みが、子どもの未来の「食べる力」を育てています!

 

 

【関連コラム】

 

噛む力は、一生の財産
― 子どものお口が育つ食卓とは ―

 
人生を楽しむため土台作り
~赤ちゃんの口の発達と心・体の成長について~

 
口腔機能発達不全症とは
 

「噛む」ことは学習して覚える大切な習慣
 

◆子ども達の噛む力はどのくらい?~咀嚼チェックせんべいの活用方法~
 

◆身体の土台作りと食べる力の発達
 

◆日々の積み重ねが重要⁈~味覚の育てかた~
 

 

【参考】

 
こども家庭庁
授乳・離乳の支援ガイド
https://www.cfa.go.jp/policies/boshihoken/junyuu

厚生労働省
口腔機能への健康への影響
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/teeth/h-08-001

日本歯科医学会連合
「口腔機能発達不全症に関する基本的な考え方」
https://www.jads.jp/assets/pdf/basic/r06/document-240402-2.pdf?utm_source=chatgpt.com

※すべて2026年5月25日利用