2025.04.30

ご存知ですか?
口腔機能発達不全症のこと。
近年、聞かれるようになった「口腔機能発達不全症」の症状やその影響、治療などについてご紹介します。
1.「口腔機能発達不全症」とは
「口腔機能発達不全症」とは、18歳未満の子どもで、生まれつきの障害がないにもかかわらず、食べる、話す、呼吸などの口腔機能が十分に発達していない、または正常な機能が身についていない状態で、2018年に保険診療で認められた小児歯科分野の新しい病名です。
日本歯科医学会では、口腔機能発達不全症を以下のように定義づけしています。
『食べる機能』・『話す機能』その他の機能が十分に発達していないか正常に機能獲得が出来ておらず明らかな摂食機能障害の原因疾患がなく口腔機能の定型発達において個人因子あるいは環境因子に専門的関与が必要な状態。
また、これに似ているものとして「口腔機能低下症」があります。こちらは50歳以上が対象で、加齢や疾患、障害など様々な要因によって、口腔の機能が複合的に低下した状態を指す病名です。
口の機能の発達が不十分な子ども達が増え、その状態が子どもの成長や健康に大きな影響を与えるとして、早期対応が重要であると考えられるようになってきました。そして、2018年から保険適用されるようになりました。
【口腔機能発達不全症にみられる症状】
口腔機能発達不全症にみられる主な症状は下記のようなものがあります。
●食べる機能
噛む力が弱く、硬いものが食べにくい/食べ物が口の中に残ってしまう/食事の時間が長くなる、食べこぼしが多い/離乳食が進まない
●話す機能
発音しにくい/言葉がはっきりしない/滑舌が悪くなる/特定の音の発音が難しい
●その他
口呼吸/口が閉じにくい/口の中が乾く/むせやすくなる/鼻呼吸ができない/いびきがひどい
2.口腔機能発達不全症の与える影響について
口腔機能発達不全症はさまざまなことに影響し、成長後にも大きく影響を与えると考えられています。
【口腔機能発達不全症の主な影響】
・顎が十分に発達しないことで歯並びが悪化する。
・顎の成長不足により本来の空気の通り道である鼻腔や気道が狭くなり呼吸困難、口呼吸に繋がる。
・呼吸困難を補うために、頭を前に出した猫背の姿勢(姿勢の悪化)に、そして顎の成長にも悪影響を与える。
・栄養摂取量の低下、免疫力低下、発達の遅れなど、全身の健康に影響する。
・発音(構音)の障害、コミュニケーションの低下。
・摂食嚥下(噛む力や飲み込む力)の障害。
〜取り返しが付かなくなる前に〜
口腔機能発達不全症は、治療などの対応をしないと上記のような症状を悪化させてしまいます。早めに対応すれば骨格などへの影響を少なくすることもできますが、成長するにつれて手術でしか対応が出来なくなってしまう可能性もあります。
さらに、口腔機能発達不全症は集中力の低下、成長やパフォーマンスへの悪影響を及ぼしやすく、他の病気の原因になってしまうことも考えられます。また、年齢を重ねた際に、咀嚼・嚥下機能の低下、疾病の発症、口腔衛生状態の悪化など、健康寿命の短縮や生活の質(QOL)の低下などのリスクになることも考えられるので、早めの治療が重要です。
子どもの頃の口腔機能発達不全は、生涯に渡って悪影響を及ぼしかねないということです。
3.早期発見が鍵!
口の使い方は、乳児期の哺乳やその後の離乳食の時期、それから普通の食事へと段階を経て徐々に身に付いていきます。小さなころの食事のとり方によっては、獲得すべき口の使い方が身につかないまま成長してしまうこともあるのです。
早い段階から気をつけておくことで、歯並びが悪くなる原因となる舌や唇の癖の改善にもつながります。
一部ですが、口腔機能発達不全症の可能性がある状態をリストにしています。
お子さんの口の状態を確認して、「いくつか当てはまる」「気になることがある」といった場合には専門家に相談することをお勧めします。

●口腔機能発達不全症の検査について
検査は主に口唇閉鎖力(唇を閉じる力)検査、舌圧(舌が上顎を押す力)検査(舌を動かす力の検査)、咬合力(噛みしめる力)測定、咀嚼回数測定などが用いられます。また、保護者からの聞き取りや、構音、かみ合わせ、呼吸の状態、歯並び、飲み込みの状態などを確認し診断されます。
●口腔機能発達不全症の治療について
口腔機能発達不全の治療の目的は、きれいな歯並びや正常な噛み合わせを獲得することではなく、正しい呼吸・食べ方(咀嚼・飲み込みなど)の方法など「正しい口の機能」を獲得することです。口呼吸、滑舌、咀嚼嚥下の仕方などに改善が必要なお子様には、口の体操をしたり、口輪筋(口の周りの筋肉)を鍛えるトレーニングを行ったりもします。
4.「正しい」咀嚼とは?
口腔機能発達不全症をチェックするには、「正しい」口の機能を知らなければ比較できません。主な口の機能である咀嚼について、「正しい」状態をご紹介します。

咀嚼、嚥下(飲み込み)、発音などの口腔機能はすべて、小さい頃に学習し身につきます。
「正しい咀嚼」が身についていないと口の周りの筋肉が発達せず、常に口が開き舌の位置が下がってしまったり、舌側(内側)に歯が傾むいてしまったりと、歯並びに悪影響を与えたりもします。

口は、食べる、話す、呼吸に関係しており、生命維持に欠かせない大切な機能です。
自分自身の口の状態、そしてお子さんをはじめご家族の口がどんな状態かを定期的に確認し、心配だと感じることがあれば歯科医院への受診などをお勧めします。
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【関連コラム】
●人生を楽しむため土台作り
~赤ちゃんの口の発達と心・体の成長について~
●あごは使って育てる!
~日々の「食べ方」が影響するあごの骨の成長について~
【参考】
●日本歯科医師会
口腔機能発達不全症に関する基本的な考え方
https://www.jads.jp/assets/pdf/basic/r06/document-240402-2.pdf(2025年4月30日利用)
●公益財団法人 8020推進財団
8020読本
https://www.8020zaidan.or.jp/hattatsuhuzen/(2025年4月30日利用)
https://www.8020zaidan.or.jp/hattatsuhuzen/03.html(2025年4月30日利用)
●一般社団法人日本老年歯科医学会 学会誌 第37巻第3号,198-200,2022
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsg/37/3/37_198/_pdf(2025年4月30日利用)