2026.08.28

テレビを見ている時、遊んでいる時、何かに集中している時。
ふとお子さんを見ると、口がぽかんと開いている。
「そのうち自然に閉じるかな」
「ただの癖だから大丈夫かな」
と思うこともあるかもしれません。
もちろん、一時的に口が開いているだけで問題があるとは限りません。ですが、安静にしている時にも口が開いている、寝ている時も口が開いている、鼻ではなく口で呼吸している状態が続く場合には、「口の使い方」に目を向けてみることも大切です。
子どもの口は、歯が生え、あごが大きくなるだけで成長しているわけではありません。
舌を動かす、唇を閉じる、噛む、飲み込む、鼻で呼吸する、話すなど、毎日の「口の働き」も、少しずつ育っていきます。
■ 「お口ぽかん」は、なぜ起こる?
お子さんがお口を開けていたら、つい、「お口、閉じようね」と声をかけたくなります。
しかし、本人が閉じようと思っても、閉じにくい理由が隠れていることがあります。
例えば、鼻づまりやアレルギー性鼻炎、アデノイド・扁桃などの問題によって鼻で呼吸しづらく、口呼吸になっている場合があります。そのほかにも、歯並びや噛み合わせ、あごや顔の形、舌の位置や動き、唇の閉じ方など、さまざまなことが関係する可能性があります。
つまり、「お口ぽかん」を単なる癖と決めつけるのではなく、「どうして口が開いているのだろう?」と考えることが第一歩です。
■ 舌は普段、どこにある?
ここで一度、ご自身の口で確認してみてください。
何も食べず、話してもいない時、舌はどこにあるでしょうか。
一般的に、安静時には舌の先が上の前歯を押すのではなく、その少し後ろ側にあり、舌全体が上あご側に収まっている状態が望ましいとされています。

一方、お口ぽかんや口呼吸がみられるお子さんでは、舌が低い位置にある「低位舌」や、飲み込む時に舌が前へ出るような使い方がみられることがあります。こうした舌の位置や使い方は、歯列や噛み合わせとの関連が指摘されています。
ただし、
「舌が下がっているから必ず上あごが成長しない」
「お口ぽかんだから必ず歯並びが悪くなる」
という単純な関係ではありません。
特に見てほしいのが、飲み込む瞬間です。
食べ物や唾液を飲み込む時に、舌が前へ出る、歯と歯の間に舌を入れる、唇をギュッと閉じる、あごの先に梅干しのようなしわができる。そんな様子が繰り返しみられる場合には、舌や唇の使い方を一度確認してみるとよいでしょう。
大切なのは、歯並びだけでなく、『普段、舌や唇をどう使っているか』にも目を向けることです。
■ 歯並びをつくるのは、歯だけではない
歯並びというと、「あごが小さいから」「遺伝だから」というイメージを持つ方も多いかもしれません。もちろん、あごや歯列の成長には遺伝をはじめ、さまざまな要因が関係します。
しかし、もう一つ知っておきたいのが、『舌・唇・頬など、口の周りから日常的に加わる力』です。
研究では、口呼吸をする子どもと鼻呼吸をする子どもとの間で、あごや顔の形や歯列・噛み合わせなどに違いがみられることが報告されています。ただし、「口呼吸をすると必ず歯並びが悪くなる」「舌の位置が低い(低位舌)から上あごが成長しない」と単純に決められるものではありません。
大切なのは、歯並びという「形」だけでなく、舌・唇・呼吸・飲み込みなどの「機能」も一緒に見ることです。
■ お口ぽかんには、別の原因が隠れていることも
さらに見てほしいのが、お子さんの普段の生活です。
お口ぽかんの背景に口呼吸がある場合、特に注意したいのが睡眠中の呼吸です。寝ている時にも口が開いている、いびきをかく、呼吸が苦しそう、眠りが浅そうといった様子があれば、鼻や上気道の状態を確認する必要があります。
子どもの睡眠呼吸障害については、注意、記憶、言語など様々な認知機能との関連が研究で報告されています。
だからといって、「お口ぽかんだから成績が下がる」ということではありません。
お口ぽかん・口呼吸
→ 鼻や上気道に問題はないか
→ 睡眠中の呼吸は大丈夫か
→ 日中の生活に影響していないか
というように、一つずつ見ていくことが大切です。
「朝なかなか起きられない」「日中眠そう」「集中が続きにくい」といった様子があり、さらに口呼吸やいびきもある場合には、睡眠や呼吸という視点からも考えてみましょう。
■ 「話すこと」にも、お口を使っています
口の機能は、食べるためだけのものではありません。私たちは話す時にも、舌、唇、あご、歯、口蓋、そして息を細かく協調させています。
例えば、「サ行などの発音が気になる」「舌が前に出るような話し方をする」「話している時にも口呼吸が目立つ」といった様子はないでしょうか。
口呼吸をする子どもでは、舌を前に出し過ぎてしまう(突出)や口や顔の筋肉の機能の問題、発音(構音)の問題などがある場合があります。
もちろん、ここでも、「お口ぽかん=発音が悪くなる」という意味ではありません。ただ、舌の位置、飲み込み方、食べ方、歯並び、発音などに複数の気になる点がある場合には、それぞれを別々に見るのではなく、口の機能として一緒に見てみるという視点が役立ちます。
■ 口を見る時は、姿勢や身体も一緒に
お口ぽかんが気になったら、口だけでなく身体全体も見てみましょう。
・背中が丸くなっていないか
・頭が身体より前に出ていないか
・食事中に足がぶらぶらしていないか
食べる・飲み込む・話すといった動きは、口だけで行っているわけではありません。頭や首、あご、舌、唇、そして身体を支える姿勢などが協調して働いています。身体が安定しないと、頭やあごも安定しにくくなります。
食事の時には、足裏が床や足台につき、お尻や体幹が安定し、無理なく食器へ手が届く環境を整えることも大切です。
ただし、「姿勢が悪いから口が開く」「体幹を鍛えればお口ぽかんが治る」という単純に考えることはできません。口・呼吸・頭や首の位置・姿勢を一緒に見るという視点が大切です。
■ 歯科で行われる「MFT」って?
こうした舌や唇など、口の周りの機能に対して、歯科などで行われる方法の一つに、MFT(Oral Myofunctional Therapy:口腔筋機能療法)があります。
MFTでは、状態を評価したうえで、舌の適切な位置を意識する、舌を必要な方向へ動かす、唇を自然に閉じる、飲み込み方を練習する、といったことを行います。
歯列や噛み合わせに関係する舌・唇・頬などの働きを整え、より適切な口の機能を身につけていくことを目的としています。矯正歯科治療などと併用される場合もあります。「この体操をすればお口ぽかんが治る」というものでもありません。原因や年齢、発達段階、歯列、呼吸などによって対応は異なるため、必要に応じて専門家による評価を受けることが大切です。
■ 家庭でまずできるのは「観察」
インターネットにはさまざまな「お口トレーニング」が紹介されています。でも、その前にぜひしてほしいことがあります。
それは、お子さんを観察することです。
・テレビを見ている時、口は閉じているか
・静かにしている時、舌はどこにあるか
・鼻で呼吸しているか
・食べ物を前歯でかじれているか
・左右の歯を使って噛んでいるか
・飲み込む時に舌が前へ出ていないか
・寝ている時に口が開いていないか
・いびきをかいていないか
・発音で気になるところはないか
・食事中の姿勢は安定しているか
「できている・できていない」と評価するのではなく、『普段、どんなふうに口を使っているかな?』と見てみてください。
お口ぽかんの原因は一つではないため、気になる症状によって相談先も変わります。
鼻づまり・口呼吸・いびき・睡眠中の呼吸が気になる場合は、耳鼻咽喉科。
歯並び・噛み合わせ・顎・口腔機能が気になる場合は、小児歯科や矯正歯科。
食べる・噛む・飲み込む・発音などが気になる場合には、言語聴覚士(ST)や摂食嚥下を診ている医療機関など。
食事や睡眠、発話など日常生活に困りごとが出ている場合には、一度専門家へ相談してみるとよいでしょう。
■ 「形」と「機能」、両方から子どもの口を見てみよう
子どもの口は毎日成長しています。
歯が生え、あごが成長し、歯列がつくられる。
それと同時に、
噛む。
味わう。
飲み込む。
舌を動かす。
唇を閉じる。
鼻で呼吸する。
話す。
といった「機能」も育っていきます。
形と機能は、まったく別々のものではありません。成長期だからこそ、歯並びだけではなく、「口をどう使っているか」にも目を向けてみてください。お口ぽかんは、そんなことに気づかせてくれる小さなサインの一つかもしれません。気になる状態が続いているなら、一度専門家に相談する。そして毎日の生活では、よく噛み、味わい、身体を動かし、楽しく食べる。そんな日々の積み重ねと適切な専門的支援の両方から、子どもたちの口の成長を見守っていきたいですね。

【関連コラム】
●遊びながら育てよう!
~今日からできる「おうちでお口育て」~
●そのひと口が、未来をつくる
― 離乳食とお口の発達の関係 ―
【参考】
・日本歯科医学会「口腔機能発達不全症に関する基本的な考え方(令和6年3月)」
https://www.jads.jp/assets/pdf/basic/r06/document-240402-2.pdf
・日本小児歯科学会「口腔機能発達不全の治療に関する重要なお知らせ」(2026年1月20日)
https://www.jspd.or.jp/recommendation/article26/
・スポーツ庁「幼児期運動指針」
https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/sports/mcatetop03/list/1396909.htm
(全て2026年8月10日利用)