1. TOP
  2. コラム一覧
  3. 脂質の働き、アスリートにとっての役割とは
Column
スポーツと食事・栄養

脂質の働き、アスリートにとっての役割とは

2025.11.30

 

 「脂質=太る」「脂質はできるだけ控えた方がいい」——そんなイメージを持つアスリートは少なくありません。しかし脂質は、炭水化物・たんぱく質と並ぶエネルギー産生栄養素のひとつであり、パフォーマンスを支えるために欠かせない栄養素です。本コラムでは、脂質の基本的な働きから、アスリートにとっての役割、そして日常で積極的に取り入れたいおすすめの脂質について解説します。



脂質の働き

 
 脂質の大きな役割のひとつはエネルギー源。1gあたり9kcalとなり、効率よくエネルギーが摂取できます。また細胞膜や神経、ホルモンの材料となるため、アスリートにとって重要な栄養素のひとつです。筋肉の合成や回復、成長、免疫機能の維持に関わるホルモンの多くは脂質を材料として作られているので、身体づくりやパフォーマンスの維持には欠かせません。さらに脂溶性ビタミン(A・D・E・K)の吸収にも不可欠です。これらは骨の健康、抗酸化、免疫維持などに関与し、アスリートのコンディショニングを支えます。



脂質摂取量の目安

 
 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、エネルギー比率で必要量を明示しており、アスリートも基本はこの数値が目安になります。競技特性やトレーニング量、身体づくりの目的によって調整しますが、脂質のみではなく、たんぱく質、炭水化物とのバランスが重要です。 減量期だからといって脂質を極端に減らすと、ホルモン分泌や回復に悪影響が出る可能性があります。一方で摂りすぎると体脂肪量の増加につながるので、「適量を摂取する」ことを意識しましょう。


(例)18~29歳男性・身体活動レベルⅢ
(力仕事や普段から活発な運動習慣がある人)の場合

 1日あたりの推定エネルギー必要量:3,000 kcal
  たんぱく質:98~113g
  脂質:67~100g
  炭水化物:375~488g


脂質の分類と主な食品

 
 脂質を構成する主な成分は脂肪酸と呼ばれ、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の2種類に分けられます。さらに不飽和脂肪酸は一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸に分けられます。


飽和脂肪酸


 肉や乳製品など動物性食品に多く含まれ、常温で固まる脂質。摂りすぎると血液中のコレステロールが増加し、循環器疾患のリスクが高まると言われています。重要なエネルギー源のひとつであり、動物性食品はたんぱく質などその他の栄養素も摂取できるので、極端に制限する必要はありませんが、摂りすぎには注意が必要です。


一価飽和脂肪酸

 
 オリーブ油などの植物油に多く含まれる脂質。体内では飽和脂肪酸から合成することができます。


多価不飽和脂肪酸

 
 体内で合成することができないため、食事から摂取する必要がある必須脂肪酸です。オメガ6脂肪酸は大豆油やごま油、オメガ3脂肪酸は青魚や亜麻仁油、えごま油などに含まれています。
青魚に含まれるEPAやDHAは、筋肉や関節の炎症を抑え、疲労回復に役立ち、また血流が促進されて栄養素が運ばれやすい働きがあるため、アスリートのみならず、一般の方にも積極的に取り入れてほしい脂質です。普段肉料理が多い人は、週2~3回は魚料理にするなど、日常の食事に取り入れてみましょう。
亜麻仁油、えごま油に含まれるα-リノレン酸も抗炎症作用があると言われています。熱に弱いため、サラダやヨーグルト、味噌汁などにそのままかけて使うことがおすすめです。良質な脂質でも摂りすぎるとエネルギー過剰になり、体脂肪の増加につながるので、1日の摂取量の範囲で良質な脂質を選択できるとよいですね。



食事で意識したいポイント

 
 脂質は量・質・タイミングが重要です。試合や練習直前は消化に時間がかかる脂質を控え、炭水化物中心の食事にします。一方、普段の食事、練習後やオフの日には、良質な脂質を適量取り入れることで、回復や身体づくりをサポートできます。余分な脂質を摂りすぎないようにするため、揚げ物や加工食品に偏らず、蒸したり、茹でたり、調理方法を工夫することで全体のバランスを整えることもできます。

 


 脂質は「太る栄養素」ではなく、正しく使えばアスリートの身体を内側から支える栄養素です。炭水化物・たんぱく質とバランスよく組み合わせることが、パフォーマンスを発揮するための土台になります。日々の食事にぜひ取り入れてみてくださいね。 



参考

●エネルギー ハイパフォーマンスセンター
https://www.jpnsport.go.jp/hpsc/study/sports_nutrition/tabid/1480/Default.aspx
(2025年11月30日利用)
●厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2025年版)エネルギー産生栄養素バランス
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316465.pdf
(2025年11月30日利用)
●柴田克己・合田敏尚,「基礎栄養学(改定第6版)」,(株)南江堂,2022
●寺田新,「スポーツ栄養学第2版 科学の基礎から「なぜ?」にこたえる」,(一社)東京大学出版,2024
●鈴木志保子,「理論と実践 スポーツ栄養学」,日本文芸社,2018