2025.8.30

妊娠や出産は、女性にとって心と体の両面で大きな変化を迎える時期です。
お腹の赤ちゃんは40週の間に約3キログラムも成長します。
その分、母体の内臓は圧迫され、血液量やホルモンの変化も加わって、体調が揺らぎやすくなります。気持ちの面でも不安定になりやすいものです。そんな中で、「どんな食事が赤ちゃんに良いのか」「どんなことに注意したらよいのか」と気になる方も多いでしょう。
妊娠中の食事で大切なのは、まず母体が健康であることです。赤ちゃんは母体を通じて栄養を受け取ります。お母さんの体をいたわることが、赤ちゃんを守ることにつながるのです。
1.妊娠中の食事のポイント
栄養バランスを整える
妊娠中は、妊娠前よりもエネルギーやたんぱく質、鉄分、カルシウム、ビタミンなど多くの栄養が必要になります。1日3食を基本に「定食スタイル」を意識すると自然とバランスが整います。
主食(ご飯・パン・麺)、具沢山の汁物、おかずに加え、果物や乳製品を取り入れると良いでしょう。

「食欲がなくて食べられない」というときには、無理をせず少しずつ。おにぎりやヨーグルトなど、間食で補う工夫もおすすめです。
つわりの時期には
吐き気が強い時は「食べられるもの」を優先しましょう。水分をしっかり摂りながら、お粥やうどん、食パンなど消化の良いものを選んでください。調理するときは繊維を短く切ったり、茹でる・蒸すといった油を控えた方法にすると、胃腸への負担を減らせます。
気をつけたい生活習慣
・塩分
塩分の摂りすぎは高血圧やむくみの原因になります。加工食品や外食の味付けには要注意。
・便秘や下痢
妊娠中は腸の動きが不安定になりやすい時期です。野菜や海藻、きのこなど食物繊維を意識して取り入れると良いでしょう。また、「何を食べるか」だけでなく、「食べたものをきちんと消化・吸収できるか」も大切です。よく噛んで、ゆっくり食べることを心がけてみてください。
・体重管理
急な体重増加は妊娠糖尿病や高血圧のリスクに。逆にやせ過ぎも赤ちゃんの低体重や将来の発達・健康状態、さらには母体の回復に影響するため、適正体重を意識して過ごしましょう。
特に摂りたい栄養素
・葉酸
赤ちゃんの神経管閉鎖障害のリスクを減らします。
(例:ほうれん草、ブロッコリー、納豆、アスパラガス、いちご、レバー)
・カルシウム
赤ちゃんの骨や歯をつくり、母体の骨粗しょう症も防ぎます。
(例:牛乳、ヨーグルト、チーズ、小魚、豆腐、小松菜)
・鉄分
母体の貧血予防に。
(例:レバー、あさり、カツオ、小松菜、ひじき、赤身肉)
ただし、貧血予防になるからといってレバーの「摂りすぎ」には注意が必要です。
レバーやうなぎなどはビタミンAが含まれます。ビタミンAを過剰に摂取すると、胎児の発育に影響が出る可能性があると報告されています。特に妊娠初期は注意が必要です。これらは栄養豊富ですが、ビタミンAの含有量がとても多いため、妊娠中は大量に食べないようにしましょう。
一方で、にんじんやかぼちゃ、ほうれん草などの緑黄色野菜に含まれる「β-カロテン」は体内で必要に応じてビタミンAに変わるため、基本的に摂りすぎの心配はありません。野菜からのビタミンA補給は安心して続けて大丈夫です。
ポイントは、「レバーやうなぎなど動物性のビタミンAを摂りすぎないこと」。
普段の食事で意識しておけば、過剰になる心配はほとんどありません。栄養はバランスよく、いろいろな食品からとることが大切です。
注意したい食品
・魚介類
クロマグロやキンメダイなど、一部の魚には水銀が含まれているため食べすぎに注意。目安は週1回・1切れ程度です。
・ナチュラルチーズ・生ハム・スモークサーモン
リステリア菌による食中毒のリスクがあるため、妊娠中は避けた方が安心です。
食事については、厚生労働省 「妊産婦のための食事バランスガイド」も参考にされてみてください。
2.いつから意識すればいい?
「妊娠が分かってから」でも遅くはありませんが、できれば妊娠前から食生活・生活習慣を整えておくと安心です。食生活や生活習慣はすぐに変えられるものではありません。普段からバランスの良い食事を心がけることが、妊娠中の安定や出産、そして産後の回復にも良い影響を与えます。
食生活を整えることは、自律神経やホルモンのバランスを整え、生理周期の安定や基礎体温の上昇につながり、妊娠しやすい体づくりの一助にもなります。
最近は若い女性のやせすぎも問題になっています。やせすぎは月経不順や不妊、将来閉経を早め骨粗鬆症につながるリスクが高いといわれています。一方で肥満は糖尿病や高血圧、不妊症などのリスクを高めます。
おわりに
食生活を見直すことは、赤ちゃんのためだけでなく、自分自身や家族の未来、さらにその次の世代の健康にもつながります。
無理をせず「できることから少しずつ」。毎日の食事を整えることが、母と子の大切な栄養の土台になります。

妊娠をきっかけに、食生活を見直してみてはいかがでしょうか??
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【参考】
●厚生労働省
「妊産婦のための食事バランスガイド」
https://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/02/dl/h0201-3b02.pdf
健康日本21アクション支援システム ~健康づくりサポートネット~
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/metabolic/m-05-009
健やかなからだづくり食生活Book
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/a29a9bee-4d29-482d-a63b-5f9cb8ea0aa2/a962bb7e/20230401_policies_boshihoken_shokuji_06.pdf
令和3年 3 月
妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針
~妊娠前から、健康なからだづくりを~
解説要領
https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/a29a9bee-4d29-482d-a63b-5f9cb8ea0aa2/aaaf2a82/20230401_policies_boshihoken_shokuji_02.pdf