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スポーツと食事・栄養

女性アスリートは悩みが多い?!食事で注意すべきポイントとは?

2023.10.25

 様々な競技や国際大会などで、女性アスリートの活躍が注目され、メディアでも華々しく取り上げられています。一方で、女性は体調が変化しやすく、悩みながらトレーニングをしているアスリートも多いのではないでしょうか。だからこそ意識したいのが「食事」。トップアスリートだけではなく、成長期のジュニアアスリートやスポーツを楽しんでいる女性、ボディメイクをしている女性にも取り組んでほしい、食事のポイントをお伝えします。



月経による身体の変化


食欲の変化

 「月経前から月経後あたりで食欲が増す」という女性は少なくありません。これは身体に起こる自然な変化であり、女性ホルモンの濃度の変化が影響していると言われています。排卵後に濃度が高くなるプロゲステロンは、食欲を亢進させる作用や、胃の働きが活発になって、消化を早くする作用が報告されています。また、月経前の体温上昇によってエネルギー消費量が高くなり、それを補うために食欲が高まっている可能性もあります。

体重の変化

 プロゲステロンの濃度が月経前に上昇することにより、水分を身体にため込みやすくなり、結果的に体重は増加傾向になります。また食欲が増すことによって食事量のコントロールが難しくなり、食べ過ぎてしまうことで体重増加しているケースもあります。


コンディションの変化

 食欲や体重の変化だけではなく、腹痛や腰痛、倦怠感やイライラなど、月経周期によるコンディションの変化は様々な状態があり、個人差も非常に大きいです。自分自身が影響を受けやすいか、どんな変化があらわれやすいか、確認しておきましょう。試合でのパフォーマンスに影響する場合は、月経時期を調整することもひとつの方法です。コンディションへの影響が大きい人や、月経周期を調整したい人は、婦人科の医師へ相談をおすすめします。現在では、「アスリート外来」がある医療機関もあるので、月経に関して少しでも悩んでいることがあれば、迷わず受診しましょう。



女性アスリートに多い3つの健康課題

 「女性アスリートの三主徴」という言葉をご存じでしょうか。女性アスリートが陥りやすい障害を示しており、「①利用可能エネルギー不足(low energy availability)」、「②視床下部性無月経」、「③骨粗しょう症」の3つの症状を指します。
「利用可能エネルギー不足」が「視床下部性無月経」を引き起こし、「視床下部性無月経」が「骨粗鬆症」を引き起こすことが、トライアングルの図で表されています。


 「利用可能エネルギー不足」は運動を含めたエネルギー消費量に対し、食事などによるエネルギー摂取量が不足した状態を指します。つまり、女性アスリートに起こりやすい健康障害の多くは、エネルギー不足によって引き起こされていることが分かります。過度な減量を強要する誤った指導は減りつつありますが、エネルギー不足が健康障害になることをしっかり理解し、適切にエネルギーを摂取することは非常に重要です。



利用可能エネルギー不足の確認

 利用可能エネルギー不足かどうか 判断することはとても難しいので、無月経、月経周期が不順の場合は、以下の方法により体格を評価し、望ましい体格を目指しましょう。



体格の評価


①BMIの計算方法

  体重(kg)÷身長(m) ÷身長(m)

(例)体重55㎏、身長160cmの場合 
 BMI=55÷1.60÷1.60=21.5

 ②標準体重の計算方法(平田法)15歳以上


 身長160cm以上・・・(身長cm-100)×0.9
 身長150-160cm・・・(身長cm-150)×0.4+50
 身長150cm以下・・・(身長cm-100)

(例)
 身長165cm:(165-100)×0.9=58.5kg
 身長155cm:(155-150)×0.4÷50=52kg
 身長148cm:(148-100)=48kg


また、以下の項目が1つでも当てはまる場合は、利用可能エネルギー不足にならない対策が必要になります。

✓体重が減少してきている
✓長期間、低体重(BMI:18.5以下)
✓体重の変動はあまりないが、トレーニング量・強度が増えてきている


※参照:女性アスリートのための栄養・食事ガイドブック 
(独立行政法人 日本スポーツ振興センター ハイパフォーマンススポーツセンター 国立スポーツ科学センター)

 

食事で意識したいポイント

 基本の食事はアスリートの基本の食事とは?詳しく記載していますので、ここでは、女性アスリートとして特に意識したいポイントをお伝えします。


炭水化物を減らさな

 エネルギー不足を防ぐためには、主なエネルギー源となる炭水化物(糖質)をしっかり摂取する必要があります。不適切な減量を実施するアスリートの中には、炭水化物(糖質)を極端に減らし、お菓子を食べてしまう選手もいます。脂質の摂取量が高くなり、栄養素のバランスが悪くなるだけではなく、トレーニングの効果が落ちたり、身体づくりが上手くいかなくなってしまいます。ごはん、パン、麺類などの炭水化物(糖質)の多い食品はしっかり摂りましょう。


骨を作る栄養素を積極的に取る

疲労骨折や骨粗鬆症予防のために、炭水化物からエネルギーをしっかり摂った上で、骨を作る栄養素も積極的に摂りましょう。たんぱく質、カルシウム、ビタミンD、マグネシウムなどは骨の形成に必要な栄養素です。

たんぱく質を多く含む食品・・・肉、魚介、卵、大豆製品、乳製品など
カルシウムを多く含む食品・・・乳製品、大豆製品、海藻、小魚など
ビタミンDを多く含む食品・・・きのこ、卵、魚
マグネシウムを多く含む食品・・・海藻


血液を作る栄養素を積極的に取る

 女性は月経でも鉄を損失するため、貧血予防のために、鉄は積極的にとりたい栄養素です。また血液を作る栄養素として、たんぱく質、ビタミンB12なども必要な栄養素です。

鉄を多く含む食品・・・レバー、肉、貝、海藻、納豆、小松菜など
たんぱく質を多く含む食品・・・肉、魚、卵、大豆製品、乳製品など
ビタミンB12を多く含む食品・・・魚、貝、肉、レバー、海藻など

 

 競技のためだけではなく、将来、健康な毎日を送るためにも、無理な減量や食事制限で健康を害することなく、健康なスポーツライフを送りましょう。


参考


●早稲田大学 女性アスリートのコンディショニングと栄養 月経周期とウエイトマネジメント
https://www.waseda.jp/prj-female-ath/conditioning/care/weight_management/
(2023年10月30日利用)

●早稲田大学 女性アスリートのコンディショニングと栄養 女性アスリートの三主徴(FAT)
https://www.waseda.jp/prj-female-ath/problem/fat/
(2023年10月30日利用)

●独立行政法人 日本スポーツ振興センター ハイパフォーマンススポーツセンター 国立スポーツ科学センター 女性アスリートのための栄養・食事ガイドブック
https://www.jpnsport.go.jp/hpsc/Portals/0/resources/jiss/column/woman/femaleathlete_guidebook.pdf
(2023年10月30日利用)

●鈴木志保子,「理論と実践 スポーツ栄養学」,日本文芸社,2018